8: リスク要因 と リスク管理
8-1: ビジネスリスク
当社は、電子製品の製造・組立業者として1987年に創立され、「カスタマーサティスファクション世界一のマニュファクチャリングサービス企業を目指す。」をビジョンとして掲げ、電気電子コンポーネントおよび自動車部品、最終製品の分野で、優越したEQCDと顧客満足を追求することを通じ差別化戦略にフォーカスする唯一のOEM製造者を目指している。当社は、より良い技術の開発と生産性の向上に継続的に取り組んでおり、コンポーネントと中間組立製品および最終完成品の製造者として、高い生産能力を持つとともに、マーケティング、製造、販売および物流に責任を負っている。当社は、ビジネス上のリスクについて、次の通り認識し対応している。
8-1-1: 製造リスク
製造リスクとは、検査工程を持っているにもかかわらず製造中に生じた製品の不具合に伴うリスクを指す。欠陥を生じた製品に起因する損失に対し、それがヒューマンエラーによるものであれ、機械装置の不具合によるものであれ、あるいは外部サプライヤーからの購入部品によるものであれ、顧客に対しては当社が全責任を負わなければならない。今や当社は、単なるパーツ製造からコンポーネントおよび完成品の組み立てへと、より複雑で高付加価値な事業に展開してきており、外部サプライヤーから購入する部品の品質に起因するリスクは、サプライチェーンリスクとして、10年前に比べはるかに重大なものとなっている。
>> リスク管理
供給の継続性と品質を確保するため、当社はキーとなる部品とそのサプライヤーの管理に常に特別な注意を払っている。主要サプライヤーおよび主要購買品の選定を進めており継続的改善に取り組んでいる。当社は、サプライヤーの品質、技術、納期、価格およびその他の信頼性の評価のみならず、財務状況も分析している。当社製品の品質に影響を与えるサプライヤーとは取引基本契約と品質保証協定の締結を進めているが、その内容を見直した契約の更新を進めており、サプライヤーに起因する製品リスクの低減に取り組んでいる。
8-1-2: 製品リスク
製品リスクは、エンドユーザーによる製品の使用に伴うものを指し、例としては、当社が販売した製品の欠陥により消費者がケガをするといったことが想定される。
>> リスク管理
リスク防止のため、製品スペックや設計を常に注意深く見直している。なお、当社は、顧客による設計に基づき製品を製造するのが基本であり、設計の欠陥に起因する製品リスクは高くない。
8-1-3: 在庫リスク
在庫リスクは、原材料、部品および製造された製品の品質が在庫中に劣化してしまうことを指す。当社は、そのような在庫の損害あるいはロスに責任を負っている。
>> リスク管理
当社は、在庫管理に様々な方針、実践およびシステムを適用することで、在庫の品質を良好に保ち、整頓することに常に特別の注意を払っている。当社は新たなシステムを成功裡に導入し、在庫管理の更なるグレードアップを図っている。
8-1-4: 債権回収リスク
債権回収リスクは、顧客の購入代金支払い不全およびサプライヤーの当社への支払い義務不履行によるリスクを指す。
>> リスク管理
当社は、顧客およびサプライヤーの支払いを注意深く確認している。新規顧客およびサプライヤーと新たに取引する際には、慎重に信用調査をしている。顧客の与信管理については、2017年より調査と格付けの仕組みを整備し、取引の安全を図っている。
8-1-5: 市場リスク
市場リスクは、市場の変動や顧客からの突然のオーダーキャンセルにより、在庫中の製品、購入部品および原材料に損失が生じることを指す。
>> リスク管理
当社が現在展開中のミニマム在庫活動方針は、このリスク低減のため引き続き非常に重要である。当社は、製品品質と価格の両方で、競合他社の先を行くべく諸策を講じている。サプライヤーとの取引基本契約を改定し、市場の変動によりフレキシブルに対応する効率的な協力関係の構築を目指しているのはその一例である。
8-1-6: 競争リスク
マニュファクチャリングサービス企業として、当社は、同業他社と競争しなければならないだけではなく、顧客とも競争することになる。なぜなら、当社が提供する「製造」は、顧客が自ら行う製造に比べ、最低限同等か、それ以上でなければならないからである。同じ理由から、当社は、顧客の競争相手とも競争しなければならない。当社は、その業態ゆえに、こうした競争リスクに立ち向かって行かなければならない。
>> リスク管理
当社は、業界で競争し、勝ち残っていくため、下記に掲げる競争優位性をさらに強化していかなければならない。
― マニュファクチャリングサービス企業としての生産方式及び技術の幅広さ、すなわち、金属プレス、樹脂射出成形、塗装・印刷、プリント基板実装、コンポーネント及び最終製品組立、金型設計、金型製作、金属表面処理を持っていること。
― 上記の各種生産方式及び技術を最も効率的な形で適用したコンポーネント及び/または最終製品の組立ラインを切れ目なく統合できること。
― 製造のみならず営業、物流、調達及び管理といった諸機能を、創業以来の歴史と経験を活かし、垣根を越えて適切に協働させられること。
8-1-7: 経済状況リスク
当社は、さまざまな産業分野におけるグローバルなサプライチェーンに組み込まれており、世界経済の状況に影響を受けることは避けられない。現在、世界経済の成長は、米中貿易戦争、中国の成長鈍化、英国の離脱によるEU経済への悪影響、原油価格変動による中東での緊張といったいくつかの事態によって、深刻な減速に向かいつつあり、当社の事業もまた、下降のリスクに直面している。
>> リスク管理
上記の各リスクに対応するため、当社は、当社事業に影響を及ぼす事態を今後も注視し、分析していく。各事態の負の影響だけではなく、例えば米中貿易戦争であれば、それは世界サプライチェーンの変化をもたらすかもしれず、その場合は、当社として機会を逃さず適切なアクションをとるようにしなければならない。いずれにしても、このようなリスクを含んだ状況においては、当社として、何らかの決定を行う前に、周到な調査検討を実施すべきである。
8-1-8: コンプライアンスリスク
証券取引所への上場公開会社として、当社は、さまざまな法令及び規則に従うことが求められている。それらの法令及び/または規則のひとつ、または複数のものを遵守できないと、当社及び上級経営者は、罰則又は法的措置、訴訟に曝される可能性がある。これに加え、そうした不遵守は、当社の評判に影響し、顧客、ビジネスパートナー、近隣コミュニティ、及びその他の利害関係者の信頼を損なうことになりかねない。
>> リスク管理
2016年にグッドコーポレートガバナンス委員会を設置して以来、当社は、コンプライアンスに関する諸事項の改善を続けて来た。例えば、会社規程整備の取り組みにより、30を超える会社諸規程の更新、更改、及び再設定を実施した。2020年には、当社は、タイ取締役協会(IOD)によるタイ上場企業コーポレートガバナンス報告2020において、2年連続でレベル4の評価を受けた。当社は、今後も改善を継続し、強化して行く。
8-1-9: 汚職リスク
汚職は、当社の事業継続性(サステナビリティ)にとって、深刻な問題及び障害となる。それは、利益を失い、罰則を受け、評判を落とすといった形で、経済的及び非経済的損失をもたらす。たとえ当社が厳格な対策及び内部統制を講じていても、汚職は、いつでも発生しうると覚悟すべきであり、当社は、このリスクに注意を向け、撲滅を図らなければならない。
>> リスク管理
当社は、汚職防止方針、倫理行動規範、及び関連する諸方針を定めており、従業員に対してそれらを教育している。当社はまた、従業員及びビジネスパートナーに対し、数種類のルートでの問題通報チャネルを提供している。2019年、当社は、リスク管理委員会を通じ、試行的に汚職リスク評価を実施した。これは国連グローバル・コンパクトの「汚職防止リスク評価のためのガイド」に基づき、腐敗防止のための民間協働連合(CAC)の「汚職リスク評価表(汚職対策自己評価ツール別紙1)」のフォームを用いたものである。
8-2: 技術リスク
電気電子機器製品の世界では、常に開発と進歩が見られ、ますます加速している。
>> リスク管理
コンポーネントの製造においては、こうした不断の進歩に対し、スピードにおいても方向性においても、ついて行かなかればならない。当社は、競合他社に対するリードを保つため、いくつかの領域で投資を続けて行く。「いくつかの領域」には、ハイテクノロジーの機械および測定機器、さらにはスキルを持つエンジニアやワーカーのトレーニングが含まれる。中期経営計画において、新たなるプロジェクトチームを立ち上げ対応を図って行く。また、当社が持つ金型製作の技術と能力は、当社が有する技術資源の中でも特に優れたものであり、顧客から価値の高いオーダーを確保し、コストを下げるため引き続き重要である。当社は、この技術の強化を図るため、技術者育成計画を増強した。
8-3: 人材リスク
電気電子コンポーネント製造産業では、人材に負うところが非常に大きいと言わざるを得ない。技術を担う人材は言うまでもなく、製造工程においても、ハイテクノロジーの自動機械やロボットを用いているとはいえ、依然多くを人材に頼っており、当社が追求する価値の源泉となっている。
>> リスク管理
当社は、従業員の福利厚生を高い水準に設定することで、各レベルでの人材の重要性を重視する政策を一貫してとっている。CP&H会(Creation, Power & Harmony Committee)と呼ばれる経営陣と従業員の合同委員会を設置し、経営陣と従業員の間の協働連携、意思疎通を効率的に進めている。2016年同委員会の運営ルールを見直し、従業員の参画をより充実させ、その結果、新委員会での協議に基づく処遇制度の改定もいくつか行うことができた。この委員会が成果を上げていることもあって、当社は、政府から良好労使関係の表彰を長年連続して受けており、昨年は10年連続の特別賞を受賞した。加えて、中期経営計画において新たなる委員会を立ち上げ人材育成の見直しを図っている。
8-4: 財務リスク
当社の製品は、直接および間接的に輸出されており、またタイでは入手できない多くの原材料やコンポーネントは外貨決済で輸入する必要があるため、為替の問題を避けて通ることはできない。
>> リスク管理
当社の各外貨での収入を支払とバランスさせることにより、実際の為替差損益を小さくするように努めている。それに加えて、当社は外貨持ち高を適切に維持し為替予約を含む財務手法を検討、活用し、リスクを最小化すべく準備している。デリバティブ取引については、規程を定めている。資金調達リスクについては、事業の拡大、強化および多角化のために必要となる追加資金需要を賄うため、当社は、タイのみならず海外の金融機関と長期かつ安定的資金提供が受けられるよう、良好な関係を築いている。
8-5: 環境リスク
当社は、社会に対し環境面で持続可能かつエネルギー効率の良い事業運営を提供するとのミッションを常に意識している。万一対応を誤ると、環境問題は、当社にとって重大なリスクとなる。
>> リスク管理
当社は、長年にわたりISO14001の認証を受け事業を運営しており、同認証システム最新版への移行も完了した。タイ政府が進めるグリーンインダストリーの認定は2016年レベル4を達成し、維持している。今年は規程を制定し環境・安全改善年次計画をスタートさせた。それらのシステムや認定や計画を活用し、当社は、化学品の取扱いや廃棄物の管理を含め、持続可能な事業運営を引き続き改善していく。
8-6: 災害リスク
当社は、火災や自然災害のリスクに曝される可能性があり、生産への障碍、ひいては当社事業に深刻な影響を及ぼしかねない。
>> リスク管理
当社は、リスク軽減のため、損害保険を付保している。本年工場の雨水排水路を改善し、一時的大雨による浸水リスクを大きく低減した。また、当社は、BCPに基づきタイおよびその他諸国に立地するグループ会社の製造拠点から支援を受けることができる。
8-7: 情報セキュリティリスク
情報関連技術の急速かつ継続的な進歩により、情報セキュリティ、または技術上の脅威に伴うリスクが出て来ている。それは、システムの不具合、ヒューマンエラー及びサイバー攻撃などによって生じる。情報システムがダウンし、またはデータの消失、漏洩、誤りおよび/または機能不全を招く事態となれば、当社の操業、競争力、信頼性、さらにひいては業界での評価に対して、重大かつ深刻な悪影響を及ぼすことになる。
>> リスク管理
当社は、情報システム管理規程および情報セキュリティ方針を改めて設定した。これらの方針及び規程の下、当社は、ファイヤーウォールの設置、ハードの冗長性確保、ウィルス対策ソフト、ソフトの脆弱性対応、バックアップ設備、重要システムへのアクセス制限等のセキュリティ対策を管理している。これに加え、当社は、教育、訓練を通じて、従業員の情報セキュリティへの意識を醸成するとともに、定期的なリスク評価及び監査を行っている。